第17章 クウラ軍・前編
(思いっきりやって怪我とかさせちゃったら兄弟仲が悪くなっちゃうかも知れないし……)
いや、攻撃をしなくてもただ逃げれば良いだけなのだろうが、見事な程に隙が無かった
とにかく離れて貰うのが先だと思い手を自分と彼の間に上げる
「サウザー様、そんなに近付かなくても聞こえてますから……」
周囲は戦闘員が好き勝手に話をしていて騒がしかった
それでもこんなに近付かなくても声は聞こえている
彼もそれは分かっているのだろうが、こちらを逃がすまいと肩に触れていた手を体を挟むようにして柱に触れた
「っ……」
視線を左右へと走らせると少し引きつった愛想笑いを浮かべる
この状態で逃げるには腕の下を潜るか上に飛ぶしかなかった
(でも、その隙が……)
無いんだよね、と彷徨わせた視線をサウザーに戻すと彼と視線がぶつかる
背丈はべジータと同じくらいだろうか
見下ろすようにしてこちらを見る目は先程から一度も逸らされていなかった
ジロジロと全身を見回されるよりも、こうして見つめられるほうがずっと居心地が悪い
ミズナは指先で彼の胸を僅かに押しながらサウザーに声を掛けた
「あの、サウザー様?その……」
そんなに見られると恥ずかしいのですが、と言うと彼が薄く笑みを浮かべる
次の瞬間、胸に触れていた手を掴まれて更に顔の距離を詰めらた
「!……つっ……」
引こうとした頭を背後の柱にぶつけて鈍い音が頭の中に響く
痛さに思わず眉を寄せるがサウザーは全く気にしていなかった
「気に入った。ミズナ、クウラ様の方へ来ないか?」
「は……え?」
「こちらにはサイヤ人が居ない。こちらに3人残り、お前は……」
そう言い、吐息を感じるほどまでに顔を寄せられ咄嗟に自由な方の手を胸から更に上に上げる
彼の口を押さえようとしたところで、いきなり体が離れた
だが、握られたままの手はそのままで腕を伸ばす格好になる
その動きとほぼ同時に彼の頭があった位置に光の線が走った