第17章 クウラ軍・前編
「君がサイヤ人か」
そう声を掛けられてミズナはそろそろと視線だけを動かした
目に入ったのは先程までクウラの側に居た男性
いつの間にこちらまで来たのだろうと思いながら口を開いた
「は、はい、サイヤ人です、けど……?」
自分たちとは違う形の戦闘ジャケット
片側だけに肩当が着き、腹部にクウラ軍のマークが入っている
ラディッツと同じ緑色のスカウターを着けた肌の青い彼は何と言う名前だっただろうか
フリーザの話を上の空で聞いていた為に顔と名前が一致しなかった
それに気付いたのか、彼がもう一方の手を自らの胸に触れる
「クウラ様の側近、サウザーだ」
「あ、はい。すみません、サウザー様」
「構わない。君は?」
「ミズナです」
「ミズナ……ミズナ、か。良い名前だな」
「ありがとうございます」
何だか紳士的のような感じはするが、肩に置いた手がそれを台無しにしていた
馴れ馴れしいなと思いつつ救いを求めるように視線をべジータに向ける
だが、彼は思いっきり不自然なくらいに顔を背けて残り少ないグラスに口をつけていた
(っ……ひどっ、そんな無理して顔を背けなくても……!)
首の筋を痛めてしまえと呪っていると、再びサウザーに声を掛けられる
「サイヤ人をこうして間近で見るのは初めてだ」
言葉と同時に顔を覗き込まれて思わず体を引く
それでもサウザーが離れないため、フラフラと後ろへ引く事しか出来なかった
だが柱に退路を塞がれて数歩移動しただけでそれ以上下がれなくなる
先程までそこに寄り掛かっていたべジータはといえば、さっさと逃げてサウザーの背後からこちらを見ていた
グラスを持っている方とは逆の手を胸の高さに上げて何か迷っているように指先を動かしている
止めようとしてくれているのが分かり、少し安心した
だがフリーザの兄の部下に攻撃をしても良いものか
彼もそれを考えているのか指先に僅かに光弾が現れては消えてを繰り返していた
しかもサウザーはちょっとやそっとじゃ動じそうに無い