第17章 クウラ軍・前編
「…………」
「ね?だから、ラディも行こうよ。少し顔出して抜け出せば良いじゃない」
「……分かった」
「抜け出す時にはべジータさんとナッパさんにも声掛けて行こうね」
彼女の言葉に頷き、面倒な事になりそうだと思いながら両腕を頭の後ろで組んだ
通知された時刻まではまだ余裕があり、別に急ぐ必要も無い
久々の休暇だというのにまさかこんな事になるとは
次の出撃までのんびりミズナと過ごせると思っていたのに
「はあ……」
隠す事もせずに盛大にため息をつけば彼女がこちらを振り向く
そして困ったように笑うと「私も面倒よ」と言って可愛らしい笑みをみせた
飲み物が入ったグラスを片手に忙しなく視線を移動させる
人が多い室内では目的の人物を探すのは容易な事ではなかった
自分の周囲にはエリート色のジャケットを来た戦闘員ばかり立っている
乗り気がしないまま会場に来たが、まさか階級で分けられてしまうとは
体格の良い男たちに囲まれ、彼らの体が壁のように視界を遮っていて失礼だが邪魔としか思えなかった
(そういえば……クウラ様の部隊も男ばっかり……)
フリーザの兄クウラ
雰囲気などは似ているような気がするが、顔はあまり似ていない
だが声はフリーザのものを低くしたような感じでソックリだった
弟と比べれば言葉遣いが少々悪く、クウラからは冷たい印象を受ける
フリーザの丁寧な言葉遣いに慣れているせいで余計にそう感じるのだろうか
そんなクウラからは”サイヤ人の生き残りか”と声を掛けられただけで今は見向きもされていない
抜け出すのには好都合だが一緒に帰る約束をした人が見つからなかった
(そうそう、今はクウラ様よりもラディだよ。何処にいるんだろ?)
そう思いながら視線をクウラから離して後方へ向ける
背伸びをしたり、体を左右に揺らしたりしているとすぐ側から声を掛けられた
「まだ捜しているのか」
「はい」
「奴は目立つだろう。すぐ見つかりそうだが?」
「そう思ってたんですけど、これだけ人がいると……」