第17章 クウラ軍・前編
こんなに近付いていたのに存在に気付かなかったのはパネルを読む事に集中していたからだろう
船同士がぶつかりそうだと思っていると近付くスピードが落ちるのが分かった
相手の船が窓の上方へと姿を消すと、ミズナが自分の体の上から降りる
そのまま窓に手を付いてその姿を追うように顔を傾けた
それを見ながら枕を背に当てるようにして体を起こす
「見えるか?」
「んー、何か真上で止まってるみたいなんだけど……」
「真上?」
「うん。連結するのかな?」
もっと良く見ようと顔の向きを変えたり、背筋を伸ばしたりする彼女
やがて諦めたのか窓を離れるとこちらへ戻って来た
隣に座ると両手を膝に置いて首を傾げる
「誰だろうね、お客さんって」
「さあな。まあ、俺たちには……」
関係ない、と続けようとしたところで再びスカウターが鳴った
新たに表示される文字を読み、視線をミズナに向ける
すると自分と同じように彼女がこちらへと目を向けた
「フリーザ様の……」
「……兄貴?」
互いに確認するように言葉を発し、暫く無言が続く
そして同じ考えに至ったのかほぼ同時に笑い出した
「フリーザ様ってやっぱりお母さんから生まれたんだねえ」
「ああ、まさか兄弟がいるとはな」
「どんな人なんだろ?」
ミズナがそう言いながらベッドの端へと移動して床に足を下ろすと髪を指で梳いた
サラサラと柔らかい髪が揺れるのを見ているとまた耳元で音が鳴る
今度は何だと思いながらスカウターを見ると文字を読んでため息をついた
「……面倒くせえ……」
はいた息と同時に無意識にそんな言葉が口から漏れる
久々に兄に会うのなら彼らだけで楽しめば良いのに
何故か戦闘員まで巻き込んで酒を飲むという通知だった
自分にも来たと言う事は当然参加しろという意味なのだろう
「下級はいらねえだろ。エリートだけ出せば良いのによ」
「あー、サボる気でしょ。駄目だからね」
「お前は行くのか?」
「サイヤ人、四人しか居ないし……二人欠けたら目立つでしょ?それに、行かなかったらべジータさんの機嫌が悪くなっちゃうもん」
「む……」
同属二人が姿を見せないと知ればべジータが機嫌を損ねるのは目に見えていた
そして、その怒りは自分に向けられる事も分かっている