第16章 二人の関係
スカウターに出撃の命令が入る
仕度は既に済ませていて、後は母船を離れるだけの状態だった
部屋を出る前に身嗜みを確認しようと鏡の前に立つ
前髪を弄っていると首に赤くなっている部分を見つけた
「ん?引っ掻いたかな~」
そう呟き、指先で摩ってみる
だがそれが引っ掻いた後ではないと分かると慌てて壁と同化している棚を開けた
普段はアンダースーツで過ごしている為、中には下着やタオルくらいしか入っていない
上の棚に手を伸ばすとそこから薄い桃色のショールを取り出した
長期休暇のときに以前侵略した惑星でラディッツが買ってくれたもの
使うのが勿体無くて眺めるだけで身に着けることはなかった
(勿体無いけど、使わないと意味ないし……)
それを首に巻くと両端をジャケットの中へと押し混む
両肩を動かしてみるが、薄手の生地で動きの邪魔にはならなかった
「変じゃないかな……汚さないようにしないと」
そう呟くと軽く髪型を直して部屋を出る
すると同じタイミングで廊下に出たべジータに声を掛けられた
「ミズナ、何だそれは」
「あ、あの、フリーザ様が今回の侵略先の惑星は氷に覆われてると言ってたので……」
「氷?」
「はい。これだけでも結構暖かいんですよ」
そう言い、ショールを指で摘んでほんの少し引っ張る
今回行く惑星が寒いのは本当のことだが、第一の目的は赤い跡を隠すため
じっとこちらを見るべジータに不自然さが伝わってしまったかと内心身構えた
だが、彼の視線が不意に自分の背後へと向けられる
そちらに顔を向けるとラディッツがこちらへ歩いて来るのが見えた
普段のアンダースーツではなく、裾や袖の長いものを着ている
彼がこちらを見ると首のショールに気付いて笑みを浮かべた
「まだ持ってたのか」
「え?」
「捨てたかと思ってた。お前が持ってるの、見たことなかったから」
「ラディから貰った物を捨てるわけないでしょ。眺めるだけなのは勿体無いから使おうと思ったんだけど……」
「……可愛い。お前は、その色が似合うな」
そう言ったかと思うと視線を逸らしてしまう
自分の発言が恥ずかしかったのか、僅かに頬が赤くなっていた
それに気付いてミズナは彼に近付くと下から顔を見つめる