第15章 王子の子守り・後編
「俺に取られるとでも思ったか」
「ああ……お前、覚えてないだろうがミズナに懐いてたからな」
「奪ってやっても良いぞ。あいつは、いい女だからな」
「っ……」
その言葉を聞いて反射的に身体が動いた
悠然と座る彼の腕を掴むと押し倒すようにして馬乗りになる
無防備だったべジータが窓の下の壁に強かに頭をぶつけて顔を歪めた
「ミズナは、絶対に渡さねえからな!」
「つっ……冗談だ。手を離……」
「お待たせしましたー。べジータさん、ジャケット……」
耳に飛び込んできたミズナの声がそこで途切れる
2人が同時にドアのほうに顔を向けると笑顔のままで固まる彼女が目に入った
瞬きをするとパッと顔を赤らめて腕に抱えたジャケットで顔を隠す
「ご、ごめんなさい!お邪魔しました!」
そう言うと手探りでスイッチを探して強制的にドアを閉めた
「!?……ミズナ、違う!」
「誤解だ!」
口々にそう叫び、ラディッツがべジータから離れる
ドアを開けるとべジータも毛布を羽織ったまま廊下へと出た
するとドアのすぐ横にしゃがみ込むミズナを見つける
「い、今のは何でも無いからな!」
「俺は、お前以外は抱かないぞ!」
「……え?だって、ラディがべジータさんを……邪魔しちゃってごめんね!」
「違う!ちょっと言い争いをしてたらつい……」
廊下で騒ぐ3人の声に何事かと戦闘員が廊下に顔を出し始めた
毛布を羽織るべジータを見て安堵の表情を浮かべる者も居る
だが、彼らが口にする言葉はどう聞いても痴話喧嘩のようだった
サイヤ人同士で三角関係かと足を止めて見物を始める者も現れる
困った顔をするミズナと、彼女に言い訳をしているラディッツと、どことなく顔が赤くなっているべジータ
やがて話を聞いていたミズナが噴出すように笑うとジャケットを抱えたまま立ち上がった
「冗談ですよ。2人とも、仲が良いですねー」
そう言うと開いたままのドアから室内へと入った
彼女の様子を見て2人の男が脱力したように肩の力を抜く