第15章 王子の子守り・後編
そう声を掛けるが、彼は自分を警戒して後ろに身を引いてしまった
自分と同じように先程までの記憶が無いのか
とにかく、落ち着かせてから今の身体に合った服を着せなければ
そのことを伝えようとしたところで、部屋のドアが開く音が聞こえた
「あ、べジータさん!戻ったんですね!」
「戻った……だと?何のことだ」
「やっぱり、覚えてないんですね」
「ミズナ、何を言っている」
「ラディから聞いてください。アンダースーツとジャケット、持ってきますね」
そう言い、ミズナがドアの前から姿を消す
ラディッツは自動で閉じる扉から視線をべジータに戻すと、ベッドに座り直した
「ラディッツ。何があった」
「お前、子どもになってたんだよ。俺と同じように、な」
「俺が?」
「ああ。この見苦しい体中の痣は……お前に殴られた跡だ。寝相悪すぎるぞ」
「寝相……?何故お前が俺の隣で寝るんだ」
「お前が1人じゃ眠れないって言うから、毎日俺が添い寝してやってたんだろうが」
「何……」
「一緒に寝たら寝たで、俺は痣だらけにさせられた訳だがな」
「俺は……何故貴様を選んだんだ」
「知るか。ナッパは母船を離れていたからな。他に親しいのは俺とミズナくらいだろ」
「くそっ!お前よりはミズナのほうが……」
「っ!……待て。……べジータ、お前……」
「何だ」
「ミズナを……好き、なのか?」
「……」
「……」
「違う」
「え?」
彼の返事に思わず間の抜けた声が出てしまう
聞き間違いかと思っているとべジータが毛布を羽織るように身体に掛けて腕を組んだ
視線をこちらから逸らすようにクッションに向けるとゆっくりと口を開く
「俺とミズナは……」
「お前とミズナが、何だよ」
「……あいつから聞いていないのか」
「だから、何をだ?」
「ミズナに聞け。お前には、話していると思ったんだがな」
「?……と、とにかく、ミズナのことを好きって訳じゃないんだな?……助かった」
そう言い、思わずシーツを握った手から力を抜いた
それに気付いたのか、べジータが口元を歪めると腕を解いてこちらを見た