第2章 距離
大きく息を吸ってもう一度水中に潜った
手櫛で髪を梳き、汚れを流す
気持ちの良い流れに素肌を晒して煤や埃を落とした
(ゆっくりしてたいけど、風邪引いちゃうかな)
日が完全に落ちれば気温が下がる
風邪を引いたりしたら2人に迷惑が掛かるだろう
ミズナはそう考え、水中を出ると川岸へと近付いた
服を拾い上げようとして僅かな物音に顔を上げる
数歩離れた場所に立つ男を見て動きを止めた
向こうも同じ様に歩き出そうとした格好のままで止まっている
「……ミズナ?」
「ラディッツ、何をして……って、きゃあぁぁっ!」
全裸だということを思い出すのと同時に慌ててアンダースーツを拾い上げて身体を隠す
そんな自分を見てラディッツも大慌てで背を向けた
「わ、悪い!ちょっと水を飲みに……」
「な、何で私に気付かなかったの!?」
「川しか見てなかったんだよ!喉が渇いて……」
「とにかく「良い」って言うまでコッチ見ないでよ!」
「あ、ああ……」
「見たら胸に穴が開くからね」
「わ、分かったって」
足元の石に視線を落とし、ミズナの言葉を待つ
すぐ側を流れる川のせせらぎを聞いていると背後から「良いよ」と声を掛けられた
戸惑いながら振り向くとジャケットを持つ彼女と視線がぶつかる
だが、ミズナはすぐに視線を逸らすとジャケットを頭から被ってしまった
「あー、ビックリした。今度はちゃんと周りも見て下りよ?」
「すまん」
謝りながら川に近付いて水を飲む
その間、ミズナは飛び立とうとせずに自分を見ていた
「ね。ラディッツ」
「ん?」
「どうしてここに?東の方に行ったんじゃ……」
「東の方は街が少なかった。だから南からぐるっと回ったんだ」
「そうなんだ。やっぱり北側の方が大変かな」
そう言い、スカウターを弄る
最初に見た街の数が半数以下になっているのを見て笑みを浮かべた
「あ、かなり減ってる。明日で終わるかもね」
「そうか。結構楽だったな」
「ベジータさんが居るからだよ」
「分かってるって。エリートさん2人のおかげだよ」
「私は別に……あ、私もう休もうと思ってたんだけど、ラディッツはどうする?」
「そういえば、疲れたな。星がデカいせいで飛ぶ距離が長い。……休むか」
そう言う彼と共に川岸を離れ、ポッドの着地地点へと向かう