第13章 王子の子守り・前編
「なあ……」
「ん?」
「ベジータ、いつ戻ると思う?」
「うーん……ラディは1週間だったけど……」
「ベジータもそれくらいか?……まぁ、良いか。子供を育てるのがどんな感じなのか分かるし」
「うん。自分の子が生まれる前の練習だね」
「……ミズナ、子どもがいるのか?」
ベジータの言葉に、周囲の人々の視線がこちらに集中する
それをガラスの反射で見ながらミズナは笑みを浮かべた
「まだです。でも、いつか必ず産みますよ。勿論、お父さんはラディです」
言い終わるのと同時に背後で食器を取り落とす音が何重にも響く
騒がしい音を気にすることなく、ベジータはラディッツの方を見た
「さっさとサイヤ人の数を増やせ。おまえやナッパの顔だけではあきる」
「か……簡単に言うな。こっちも色々と……」
「王子としてのめいれいだ。さっさと子どもを作れ!せんとう力はミズナに似るようにしろよ」
「……命令ですか、王子。分かりました」
その言葉にラディッツがミズナの方に顔を向ける
すると頬を僅かに赤らめている彼女と視線がぶかった
「授かりものだからいつになるかは分からないけど、ね」
「あ……ああ。そうだな」
呟くのと同時にガラスに映る人々が一斉にこちらに視線を向ける
寒気と同時に殺気を感じて身震いをすると小さく溜息を吐いた
(……心臓に悪いな)
母船に乗っている唯一の女性のせいかミズナの人気は異様に高い
そんな彼女と、いつもよりも人の多い場所でこんな話をしては睨まれるのも無理はないだろう
ラディッツは飲んでいたペットボトルを手の中で転がしながら視線を正面に向けた
とりあえず今はベジータの世話に専念しなければ
子供の相手などしたことのない自分にちゃんと面倒を見られるだろうか
そんな不安を感じながら横に視線を向ける
するとベジータを背後から見つめるミズナの横顔が目に入った
穏やかな笑みを浮かべ、優しい目でベジータを見ている