第13章 王子の子守り・前編
ミズナがベジータの手が届く場所に飲み物を置くとベッドを離れた
あまり長居してもベジータが疲れるだろう
そう思い、自分もミズナの後に続いて部屋を出る
廊下に出るとミズナが小さく息を吐いた
「あんな弱ったベジータさん見るの初めてだね……大丈夫かな」
「ああ。それに……」
「ん?」
「……何でもない。気のせいだと思う」
「そ?」
「さ、ベジータに何食わせるか考えないとな。何がいいと思う?」
「ん~……ラディが作ったプリン……とか」
「……」
「……」
「それ、お前が食いたいんだろ」
「うん!それに、ベジータさんも好きだよ。前に食べてたし」
「……分かった。作るからついて来い」
「やったー」
嬉しそうに笑みを浮かべ、こちらの腕に抱きついてくるミズナ
自分が作る食べ物のどこが良いのか分からないが、好いてくれているのなら悪い気はしない
そう思い、食堂に向かって歩き出した
廊下の左側に並ぶ窓を見ながら、以前自分が寝込んだ時のことを思い返す
あの時、侵略から戻ってきてすぐに寝込んでしまった
起き上がることすら辛く、身体中に痛みを感じたあの地獄の一週間
ベジータの様子があの時の自分と同じ様に思えてしまった
(……気のせいだと思うが……)
あの後の記憶は無いが、かなり回りに迷惑を掛けてたらしい
気付いたらミズナの部屋のシャワー装置の中で泡に囲まれていた
ベジータが自分と同じように子供に戻ってしまったらどうなるのだろう
嫌な考えを振り払うように首を振るとこちらに寄り掛かって歩いているミズナに視線を移した
見られていることに気付いた彼女がこちらに顔を向ける
どうしたのかと首を傾げるミズナに対し、ラディッツは笑みを返すと厨房へ足を向けた