第2章 王子
「ファラオ、王子がいらっしゃいません」
「また外へ行ったのだろう。
いつものことだ、男だし気にするな」
慌てて知らせに来た者に、父王は呑気に返事をし、
政の書面に視線を戻した。
(戻ってきたヤツは何を言いに来るか、楽しみだ)
ルシエトは、離宮や闘剣場建設現場で労働者や
それを監視する役人を見ていた。
石の重さに耐えられず膝を着いた労働者に、
監視係の鞭が飛ぶ。
「ゔっあっ」
呻き声が聞こえた。
(あんなに痩せ細っては十分な労働は出来ない)
「待て」
「何だ貴様!……‼︎」
ルシエトに怒鳴りかけた監視係が青ざめた。
「大声を出すな」
ルシエトは怯える監視係を低い声で制する。