第2章 王子
エジプト王国の次の王。
王子 ルシエト。
少し鋭いアーモンドの眼は強さを湛え、
夜空のような黒色の瞳は輝きを湛えている。
少し癖っ毛の紺褐色の髪
スッと通った鼻梁は高く、
キュッと上がった広角の口元は
なんとなく柔らかさを醸し出す。
美男。
幼い頃から 体術、剣術を学び、
座学もさぼらなかった。
好きではないが、政も学んだ。
王子と言う肩書きを保持しながらも、
自由でありたい と思ってきた。
だから、強くなろうと思った。
独りで自由に街に出れるようになったら
民がどんな暮らしをし何を求めているか、
どうすれば、皆が幸せでいられるか、
ちゃんと考えたいと思っていた。
でも、王宮では出る杭は打たれやすい。
少将、大将、宰相、総裁、司祭……
王の座を狙っている者は疑えばキリがないほどいる。
父王には「王宮内の者は血が繋がっていても信用するな」
と言われていた。
信じるのは「己」だけ。