第6章 皇子と皇女
「あ、あなた……」
紅玉は顔を俯けてぷるぷると震え始めた。突然のことで私は驚く。
「わ、私の、お話相手になりなさ い!!」
再びがばっと顔を上げたとき、紅玉の顔は真っ赤になっていた。
意表を突かれ、咄嗟に言葉の出てこない私に対し、返事がないのを拒否と受け取ったのか、紅玉はしょんぼりとうなだれる。
「やっぱり、駄目かしら……」
「いいえ!」
気づけば私は叫んでいた。
「私で良ければいくらでもお話相手になります!全然、駄目なんかじゃありません!!」
それを聞いた途端紅玉は私の手をがっしりと握った。
「本当!本当よね!?」
「は、はいぃ。もちろんですぅ」
握られた両手が勢いよくぶんぶんとシェイクされた。正直ツラい。やめて!私のHPはもうゼロよ!と言ってしまいたいくらいである。
「と、ところでお姫さま」
「何かしらぁ?」
「なぜ、ずっと笑顔なのですか……?」
私がずっとツッコみたかったのはこのことだった。
ぷるぷると震え出したときも、しょんぼりとうなだれたときも、紅玉はずっと、表情だけは笑顔だったのである。
「こ、これはぁ……」
笑わないでよ、と言って紅玉は話し出した。
「か、夏黄文が、お友達とお話しするときは『すまいる』をするんですよって言ったからぁ……す、『すまいる』って笑顔のことなんでしょう?だから私、頑張って……」
紅玉の返答に私は微笑んだ。
「お姫さま」
「何?」
「私とお話するときは『スマイル』はいりませんよ」
「お友達にはなれないから?」
「いえ違います!友達だからこそです」
紅玉は目をぱちくりとさせた。
「友達、だから?」
「はい。友達だからこそ、いろんな表情が知りたいのです。あなたがどんなとき、どんな気持ちなのか知りたい。だから、自然な表情をしていていいんです。それが本当の友達というものでしょう?」
「本当の、友達……」
紅玉は口元をぎゅっと引き締めた。
「改めて言うわ。私とお友達になってくれる?」
「はい、喜んで」
今度は自然に笑ってそう言えた。