第3章 石田治部少輔三成の病
様を想うこの感情が“愛”なのだ
こんなに苦しくて切ないのが恋なのか?
もっと楽しい物だと思っていた
秀吉様はさすがだな。こんなに苦しい恋を多くの女性と出来るとは。
私は様一人にこんなに苦しんでしまう。
彼女以外の女性と恋など考えられない……
だが気付くのが少し遅すぎた……
戦も恋も少しの遅れが勝負を左右する
私としたことが、恋の策略に遅れをとってしまった。
「三成君、どうしたの? 恐い顔になってるよ。準備出来たよ、行こう。」
もう手遅れなのでしょうか?
様を連れて天守への廊下を歩いている間、色々と策を練った
この気持ちはどうするべきなのか。
忘れてしまう事など出来るのか?
「信長様、様をお連れしました。」
「入れ。」
いつもの見慣れた天守の景色がやけに卑猥に感じた
これから信長様はここで様と夜伽をされる
あんな事やこんな事、信長様の事だから様をああして、こうして……!
「三成、お前はもう下がれ。入り口で誰も近づかぬよう人払いをしていろ。」
「承知致しました。」
部屋を出て、入り口に座る
なんて残酷な仕打ちでしょう
愛する人の操が、自らの仕える主によって、無理矢理、強引に、卑劣極まりなく襲われてしまうのを、薄い襖一枚隔てたこの場所で、ただただ聞いていなくてはならないのか?
しかし御屋形様の命令に背けるのか?
このまま様への気持ちを押し殺せるのか?
自問自答の葛藤を繰り返す
諦めたら、そこで試合終了ですよ
っと誰かの声が聞こえた気がした。