【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第49章 まずは一歩ずつ
今まで、独りで海軍を生き抜いてきた。誰も助けてくれなかった。エース、サボ、ルフィもいなかった。
自分がやらなきゃいけなかった。
親父様は考え方を変えてくれた。信頼し助け合うのが家族だと言った。抱きしめられた時深く深く刺さっていた不安というトゲが溶けていき、何度目か分からない温かい涙を溢れさせた。
「独りで抱え込むなァ、馬鹿娘」
『うん…ッうん、ごめ…ごめんなさい…ッ』
その腕の暖かさに、涙が止まらなかった。
「グララララッ、アンは泣き虫だなァ」
親父様はいつもの優しい顔に戻っていた。この5日間まともに眠ることなく過ごしていた私はそのまま意識を途切れさせた。
「エースッ、いるんだろォ?入ってこい」
部屋の外でじっと親父とアンが終わるのを待った。泣き声が聞こえていた。ゴンと何かを殴る音も聞こえた。止めに入るのはなんかちげぇと思ったから、俺はずっと我慢した。そしてようやく声がかかった。
「悪りぃ…ずっと外にいた。」
「グララララッ、知ってるわァアホンダラッ!」
「寝ちまってんのか?」
親父が腕に抱いて寝てるのは、確かに俺の妹。
「考えすぎて眠れなかったんだァ、寝かせてやれ」
「あぁ…」
「何を心配してるのか知らねェが…アンは俺の娘だァ」
ただ一言、それを聞いただけで仲直りできたんだと思った。
だから、言っただろ? そんなみみっちい奴らじゃねえって。
親父からアンを受け取ると、マルコが部屋に入ってきた。
「ん、やっと出てきたのかい?」
「あァ…話はついたァ」
「そうかい。」
「そう責めてやるなァ、マルコ。分かってるだろォ?こいつァ、とてつもなく家族を思ってんだってことくれェよ。グラララ」
「あぁ…知ってるよい」
マルコはアンの頬を撫でながらすまなかったねい…とそっと囁いた。
「じゃ、俺アンを寝かしてくるから」
「おォ、頼んだぞォ、グララ」
パタンと部屋の扉を閉めた。マルコが名残惜しそうに、こちらを見ていたが俺の優先はアン。
ふと、部屋がぐちゃぐちゃだったことを思い出して、俺は自室へ運んだ。ベッドへ寝かそうとしたが剥がれない…。
『ん…エースッ』
「ったくしゃーねぇな…ちゃんと後で言い訳しろよ?」
俺も大概甘いな…。そう思い、久しぶりに2人で眠りについた。