【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第49章 まずは一歩ずつ
分かってたよ…みんなを裏切る行為だってことも…だから誰にも言わなかったんだ…
『ッうぁ…ふ…』
殴られた頬は熱を持っていて、痛い。
自分を売ってでも家族を守りたかった…。
エースを助けたかった…。
信じてないわけじゃない…疑ってるわけじゃない。
『少しでもッ、可能性を…あげたかった…ッ!』
机にあるものも、ベッドも何もかもに八つ当たりをした。
ガシャンッ!!ビリッ!!と物が壊れていく。
理解なんてしてくれなくていいッ!今、みんなが幸せならそれでよかったッ!!
『ッあ、あ、あぁぁぁぁ…』
心が痛い。自分が悪いのに…。
…マルコに…怒られたことが…みんなを…信じてなかったことが…親父様を少しでも裏切ってしまったことが…その事実が私を苦しめた。
「おい、どうした!!」
「アンちゃん!?」
「開けてよ!!」
音に驚いたのか、声に驚いたのか心配になった人が部屋の前に集まっていた。でも、私は扉を開けなかった。
ドンドンと何度も叩かれる扉…。
「アンッ!!燃やすぞッ!!」
「蹴破るよ!!」
「何事だッ!!」
「アンちゃん!!出てきてッ!!」
『今は放っておいて…ッ』
絞り出した様な声は、扉の向こう側まで聞こえただろうか。
いや、聞こえてないんだろう…扉はまだドンドンと叩かれている。
『後悔…先に立たず…か。』
マルコはきっと親父様には報告に行くだろう。
みんなにも知れ渡るだろう。そうして言われるんだ。
なんで信用しなかったんだ。
俺たちが弱いと思ってたのか。
って…。
『ッ違う…みんなで帰りたかったんだよ…ッ。』
ポロポロと溢れてくる涙は止まらない。扉の音も止むことはない。
「アンよい…親父には報告した。後で部屋来いよい。」
マルコは扉の前でそう言った。みんなを追い払ってくれたんだろう。前から気配はドンドン消えた。
改めて見ると、部屋の中はぐちゃぐちゃでとても見れた物じゃない。
『信じて欲しい…私は…裏切ってないよ…』
腹部にある親父様のマークを撫でる。外に出る気はなかった。部屋の家具を扉の前に移動して私は部屋に篭城した。
何もかもを投げ出した。
考えたかったんだ…。
自分がしてきたことを…ゆっくり…と
私はどんなに扉を叩かれようが声をかけられようが絶対に応じなかった。