【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第38章 家族の暖かさ
ビブルカードは海のその向こうを指していた。
『まだまだ追いつきそうにない…』
「おい…娘」
海のうえを歩いているのに別の声が聞こえるなんて…。
『疲れてるのかな』
「おい…」
後ろから聞こえる声に振り向くと、人一人が乗るくらいの小舟。そしてそこに座っている男は黒い剣を背中に背負い、獲物を狙う鋭い瞳を持つ王下七武海 鷹の目 ジュラキュール・ミホーク
『何でここにいるんですか』
「俺がここにいては不満か」
『いえ…私、行かないといけないところがあるので』
「まァ、待て。そう急ぐこともなかろう。」
『呼び止めるのはいいが、その黒い剣を抜くのはやめて頂きたい』
おとなしく小舟の乗ると、ギィときしんだ。
『船壊れないですよね』
「多分な…」
『…で何のご用なのでしょうか』
「…少しお主と話したくなっただけだ。赤髪の嫁になるそうだな」
『は?』
「この間、赤髪にあったときに言っていたぞ」
『…なりません。後で連絡しておきます。』
「そうか」
ミホークはじっと黙り込んだ。
本当にこの人はつかめない…。
こうしている間にも親父様は動いていた。
「フッ…先ばかりを見ていて焦っているのか。」
『少し心配なことがありまして…。』
「前を見続けるのもいいが、たまには過去を振り返ってみるのもまた一興だ。」
『過去ばかり見てたんです。でもそれを変えてもらった。それを次は兄に伝えたいのに…』
「そういうときはたまには放って置くのもいい」
『フフ…そうですね』
「…笑えたのか」
『ほんと失礼ですね。』
長く話していたわけではないが、誰かと話せたことで気持ちが少し楽になった。
「…子供はいつまでも笑っているものだ」
『子供じゃないですよ…』
「そうか…」
小舟を静かに下りると、鷹の目は波に逆らわず静かに流れていった。ぴちゃぴちゃと海をまた歩き出した。
「おい、ベック!白ひげに使いをだせ。」
「なにをするんだ、今度は。」
「ちょっと話し合いを…な」
遠くを見つめているシャンクスの手には一枚の新聞。
[一夜にして滅んだ国 ドラム王国 背景には黒ひげと名乗る男か]
「それは…」
「傷がうずくんだ…この左目にあるこの傷がな…」
アラバスタを出て一週間が経った。ひたすらと歩き続けた旅にもようやく終わりが見えた。目に見える大きな白い鯨の船。
『ただいま…』