【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第34章 太陽の昇らない海
部屋に戻るとまだ先に服を着替えた。医務室から患者着に薄いカーディガンを羽織った状態で帰ってきたので少し体が冷える。
船を少し冷たい風が通り抜ける。きっと秋島の海域に入ったんだろう。
『…エース…』
窓の外を見ると、雨が降りそうなどんよりした天気.。
『女心と秋の空…ね。』
服を着て、一息ついたところで静かにノックオンがなる。見聞色の覇気を使うまでもなく扉の向こうの人はすぐに声をかけてきた。
「ちょっといいかな、アンちゃん」
この船で私のことをちゃん付けで呼んで部屋まで来るのは1人しか思い当たらない。
『空いてるよ。サッチ』
ガチャと扉を開けて入ってくるサッチは片手にトレーを持っておりこの上には湯気がまだ出ており暖かいであろう飲み物が入っていた。
「はい、ココア…ここまであの服で歩いたって?風邪引くだろ?」
いつものように戯けているようだが…いつもよりは笑顔がなく覇気もない。サッチからカップを受け取ると、ベッドに隣同士で座った。
『何か言いたそうな顔してるよ…サッチ。そんなに辛そうな顔をしないで…』
「…ッ、なんで俺なんかのために…」
そんな声を出す彼は涙が溢れそうになるのを必死に耐えている顔をしていた。
『約束したはずよ?私がすることを止めないと。そして言ったよね。私は家族を守るためならこの命を惜しまない。私はサッチに生きて欲しいと願った。』
「あの時、俺は死を覚悟した。アンちゃんに力を使って欲しくなかった…でも、こうして生きて、飯食って、仲間といれる自分に良かった、死ななくて良かったッて!! そのせいでアンちゃんはッ命を削ったッていうのにッ!!」
『それでいいんだよ…サッチ。そう思うことはいいことなんだよ。
私が勝手したことにサッチが巻き込まれただけだよ。そんなに自分責めないでよ…』
「俺は…ッァ」
下を向いて顔を合わせないサッチの膝は少しずつ水の跡が増えていった。
『サッチ…生きていてくれてありがとう。』
「ッく…ぅあ…」
サッチを抱きしめると、おおきな体で返してくれた。
「ほんと…ありがとうッ…俺を生かしてくれてッ」
『うん…』
泣き終わったらいつものサッチに戻って欲しいな。大丈夫みんなから隠してあげるから。だから早くいつもの楽しい話をして…。
水の力を見えないよう使い、鍵をかちゃと掛けた。