【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第33章 船での裏切り
エースの覚悟はとても堅かった。
「だから…俺はあいつを追う。」
『私も…行く。』
「それはできねぇッ」
『エースがいくならッ!エースが隊長だって言うならッ!私だって副隊長だよッ!!』
「お前は動ける状態じゃねぇだろ? マルコの炎で傷は塞いでも完全には治ってねぇ…そんな奴を連れて行けるかッ!」
『治ったッ!! エース1人じゃティーチにすぐ負けるから!』
「そんなわけねぇッ!!アン…頼む。お前を危険に晒したくない。これ以上傷付けなくねぇんだッ」
エースは悲痛な顔を浮かべた。
『…嫌だッ、私だってもう仲間を家族を死なせたくない…。だからッ…ッア』
首元に鋭い痛み、手刀でも入ったのか。
『…え、す…』
「これを代わりにおいていく。アン用に作ったんだぜ?
これをつけて、寝てろよ。必ず帰ってくる。
にいちゃんだからなッ、1人にしねぇよ」
シャラと腕に冷たいものが付けられた。意識が途切れる寸前に見えた青い石の腕輪。それはエースが首につけているものと色違いだった。
「じゃ、行ってくる」
完全に意識は黒い闇へ落ちたのだった。
荷物を持ち、甲板に出る。みんなが俺に付き纏う。
「待てよい…エースッ!どこにいくつもりだ?」
「俺はあいつを追う」
「やめろよいッ!!エース、頭を冷やせッ!!」
「親父も今回は特例だって言ってんだッ!!ティーチは追わなくていいッ!!」
「あいつは俺の隊の部下だッ、アンやサッチを傷付けておいて何も落とし前をつけさせねぇなんてそんなわけないかねぇだろッ」
俺の行先を塞ぎ、阻む家族の手。
「エース…いいんだ…今回ばかりは妙な胸騒ぎがしてなァ…。それに家族は誰も殺されてねェ…今回は…いいんだァ」
「あいつは仲間を家族を傷つけて出てったんだぞッ!!何十年もあんたの世話になっておきながら、その顔に泥を塗ったんだッ!!!」
仲間を振り切って、ストライカーに乗り海へ出た
「待てよいッ!!アンはどうすんだッ!!」
心残りだったがあいつは強い…しっかり生きるだろう、俺は船足を止めることなくそのまま進んだ。
「必ず…ティーチにけじめをつけさせて帰る。それまで待っててくれ…アン」
静かに波打つ海はアンが眠っているからだろう。大きな波も立てず俺の進む道を邪魔しなかった。