【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第33章 船での裏切り
「だからさ、俺は食う気ないわけ。」
『それが…サッチの決めたことならいいと思うよ。』
再びココアを啜ると2人の間には静寂が流れた。しかし、その静寂を破るように声が響いた。
「じゃあよォ、俺にそいつをくれねぇか?」
扉を見るとゆっくり出てくる大きな体…。
「ティーチじゃねぇかッ!お前も夜更かしか?」
「いや、俺ァ…その実をもらいにきただけだ。」
「は?お前、これが欲しいのか?」
「あぁ…欲しいねェ。そらァ、俺が何十年と求めてきた実だからなァ!」
『…ティーチ?でも、これはサッチが見つけたものよ?』
「そうさッ!この船では見つけたものが食ってもいいという掟だッ!だから、俺は奪いにきたんだッ!!海賊らしくなッ!!」
ティーチはサッチの方にゆっくり歩いている。その後ろ手には光る刃物。
『サッチッ!!逃げてッ!!』
「アンちゃん…グアッ…ティーチ…な、にを」
白いコック服が赤く染まっていく。
「お、悪いな…一発で殺してやれなくて。」
ティーチの手にはサッチが先ほどまで持っていた悪魔の実があった。
『サッチッ!! ねぇ、しっかりしてッ!!』
「…アンちゃん…に、げろ」
「なぁに、心配するな。アンは殺さねぇ。俺には必要だからなッ!」
『必要?』
「あぁ…そうさッ!俺はこの海を総べる海賊になる!
お前もこいッ!俺の右腕になれッ!!」
『ふざけないでッ!!私があんたなんかについていくわけないで…しょッ…ッア…ぐっ』
バンッという乾いた音、赤くなる脇腹に打たれたのだと思った。油断していて体を変化させることもできなかった。
「そら残念だ。 じゃあな、俺はここからとんずらするぜ?」
『ま、てッ!』
ティーチは早々に部屋を出て行き、私はそれを追うよりもサッチを優先した。
『サッチ…大丈夫だから…』
「俺は…ッもう、い、いから」
『ダメだよッ! ッ私がいる限り…誰も殺させないッ!』
意識を集中させた、手一点に力を凝縮させて緑の玉を作り出した。
「や、めろッ!」
『約束…したよねッ、私がすることを止めないッて…癒しの涙』
サッチの身体に浸透するように水の玉は消えていく。あの時イゾウを助けたようにサッチの傷はどんどん消えていった。
『体力とか…戻せないのが…残念…ッ』
「アンちゃん…ッ」
サッチはそのまま眠っていった。