【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第33章 船での裏切り
悪魔の実の噂は船内に広がるのに時間はかからなかった。
「どうすんだい?」
「あー、食うか、売るかってやつ?」
「食えよ、サッチッ!」
『サッチが能力者ねぇ…』
「俺が食うと、お前たちが海に落ちた時助ける奴いねぇだろ?」
『私がいるけど…』
「あ、そうか…俺も能力者になって、アンの御胸に抱かれたい」
「「やっぱり食うな/よい!」」
「冗談だっつーの!!まだ考えるわ。結構将来に関わるし。これが何の実とかも分からないしなッ!」
サッチはニコニコと実を持って部屋に戻っていった。
『…食べるのかな?」
「どうだろうな…」
この船の掟では見つけたものに所有権がある。食べるのも売るのも自由だ。この時私たちは気づかなければならなかった。ジッと実を見つめて狙っているものがいることに…。
しんと静かな真夜中、戦闘に疲れた4番隊は早々に眠りについていたが隊長のサッチだけは翌朝の仕込みを行なっていた。
『サッチー、コーヒー頂戴ー』
「お、アンちゃん。まだ寝てねぇのか?」
厨房からひょいと顔を覗かせていた。
『うん…まだエースの書類の整備とか、船のことについてまとめないと…ふわぁ…』
「無理はダメだぞー。」
コトンと置かれたコップにはコーヒーではなくココアが入っていた。
「夜更かしはダメ。明日にしなさい。」
『でも…』
「こりゃ、隊長命令よー?」
『私の隊長はサッチじゃないし。』
「…あはははッ!じゃ、お兄ちゃんからのお願いってことで。」
『もう…妹に甘すぎよ』
「アンちゃんだからだよ…」
『え?』
「アンはさ、何で悪魔の実食べたの?」
『たまたま…住んでたところの海岸に落ちてたの。お腹減ってたし、食べた。めっちゃ不味かったけど。』
「へ…そうなんだ。」
『うん、何かも分からないものを食べて…でもこの力が手に入った時、エース、皆を守れる。そう思ったよ。』
「そっか…」
『今は家族皆んなを守るけどね!』
「男前すぎてお兄ちゃん泣きそう。」
『サッチはどうするのか決めたの?』
ズズッと啜るとほんのり甘いココアが体を暖めた。
「俺はさ、別に能力がなくても強いし、かっこいいし。
うちにはさ、親父とマルコとエースとジョズ、それとアンちゃん、5人の能力者がいるけど誰かが海に落ちた時助けられる奴が多くいた方がいいよね」