【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第28章 始まりはすぐそばに
話しながら、お酒やつまみを食べ何気ない話を続けた。
「なァ、俺な…昔ドラゴンさんに拾ってもらったんだ。」
『ふーん…』
過去を知っている私は特に返すことなく聞くだけに徹底した。
「昔、天竜人に打たれてこの火傷を追ったって聞いてんだけど。俺その時の記憶一切なくて…何も覚えてねェんだ、過去のこと。」
『…ふーん』
「ふーん…ってなァ。もっと俺のことに関心持ってくれよ。」
『関心って…別に過去なんてどうでも良くない?そんなこと言ってたら私は人殺しだし、海軍だったし…キリがないよ。大切なのは今をどう生きてるかでしょ?』
「…さすが、元中将殿は言うことが違う。」
『それに…そのうち思い出せるかもしれないじゃない?』
「…そうだな…」
『思い出せたら…お祝いしてあげるね。』
「なんの祝いだよ。」
『サボが記憶を取り戻せた祝い』
「ネーミングセンスねェな。」
『うっさい』
他愛のない話だったが…サボは知らない。思い出さない。私やエース、ルフィと過ごしていたことを、私たちが兄弟の盃を交わしたと言うことを…彼は怒るだろうか。
どうして教えてくれなかったんだ…と。
どうして話さなかったんだ…と。
どうして隠したんだ…と。
『それはそれで…仕方ないのかもしれない。』
「ん?なんだ?」
『何もないよ』
彼はまたグッと酒を煽り、ガンとジョッキを置いた。
「そういえば…これは裏で出回っている情報なんだが…アン。おまえを探しているみたいだぞ。」
『誰が?』
「王下七武海…ドンキホーテ・ドフラミンゴが」
肩がびくっと震えた…。
『どうして…』
「さあ? そこまではさすがに…でも気を付けろよ。」
『…うん。サボはもしかしてそれを伝えにきてくれたの?』
「…いや、偶然だ。別に心配なんてしてねェ」
『…そっか…ありがとうね』
「ほんとに気を付けろよ…あいつはとんでもねェからな」
『わかってるよ…知ってる。』
独特の笑い方をするピンクの大男のことが頭に浮かんで消えていった。
「何かあったらすぐに連絡しろよ。」
『うん…知ってるって』
「ったくよ…じゃあ、俺は行くからな。」
ポンと頭を撫でて、フードを再び被り店から出ていった。
『ドンキホーテ・ドフラミンゴ…ね。』
カランとグラスにあった氷が音を立てた。