【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第27章 会うことはないという願い
氷の弓矢が私の足と肩、腕の皮膚を割いた。ポタポタと垂れる暖かい血。冷えていく体に思考が停止していくのを感じた。
『ッあ!!』
「なに、油断したってやつ? ほんと、かわいいね。その体には傷つけたくなかったんだけど。仕方ないってやつじゃない?大人しく降伏してくれた方が助かるんだけど?」
『こんな傷どうってことありません。あの時の痛みに比べれば…降伏もしません。親父様に散歩って伝えてるんです。早く帰らないとまた怒られます。』
血はいつの間にか垂れなくなり…というか冷気のおかげで外部にある血の温度は下がり凍っているのだと思う。
「いい感じに育って、おじちゃん嬉しい。そのままお嫁さんに来てくれると嬉しいんだけど。」
『冗談言ってる暇あるんですか?構えとかないと食べられますよ?』
青キジさんの真後ろにいるのは怒っている海王類。
〔どうして…人間…女神傷付ける〕
〔その力は…嫌い〕
〔殺してやる〕
負の感情を纏っている海王類は勢いよく青キジさんに攻撃を仕掛けた。が、海の上にこの能力…そう簡単に死ぬわけもなく、逆に海王類の方が氷の下から動けなくなっていた。
「この氷の上で俺に勝とうなんて…まだまだ早いっつーの。」
正直寒さで体が悴んできていた、もともと水の能力者の私には長期で冷気の中での戦闘はしてはいけないものだ。
『ッ…もう帰ってください。』
「アンちゃんさー…これ何か知ってる?」
青キジさんの胸ポケットから出てきた1個の電伝虫。それはいつもなようにカラフルな物ではなく、全部が金色に輝いている。
『ゴールデン電伝虫…ッ!』
「そうそう…俺がこれで連絡しちゃったら、バスターコールってのが発動ちゃうわけよ。そうなると近くの島にいるあいつらはどうなるか…わかるよね?」
チラチラと見せる電伝虫…まだ起動はしておらずボタンが押されて連絡されてしまったら…想像するだけで恐ろしい物だった。また出航の準備は何もできてない上にみんなが完全に油断している。
「どうするの?」
『私が…そちらに行けば家族は見逃してもらえるんですね。』
「今の所はね?アンちゃんの兄貴ってやつも捉えなきゃならねェけど…今日のところは見逃してあげる。」
『わかりました。』
手を後ろ手に回され、ガチャンという金属音はいつものやつだった。
「さ、行こうか…アンちゃん」