【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第27章 会うことはないという願い
親父様に見送られ、船を飛び降りると海の上に薄い膜を張るような感じで下に降り立った。
『久しぶりの海…』
最近は色々あった。ゆっくり海を見る暇もないくらい時間が過ぎるのが早い。
海王類が顔を出してくるが、私の顔を見ると近寄ってくるか何もせずに海は帰っていくのどちらかだ。
〔女神…あそこ凍ってる…動かないんだ。〕
海王類が目線を送る先には一本の氷の道。それはひどく懐かしいもので、二度と会いたくないと願っていたものだった。
〔女神…あれ、溶かして欲しい。〕
懇願してくる海王類もこうやってみれば可愛いものだ。仕方ないとばかりに能力を使い、海を波立たせると氷の道に当たっていき、そして海水温との温度差で氷がどんどん消えて行った。
そもそも放っておけば勝手になくなるものがまだ残っている…と言うことは。
『近くにいるんだ…』
いつもアイマスクをつけて、気だるそうに仕事をしていた元上司を思い浮かべる。今もきっと仕事から逃げている違いない。
『ねぇ…少し聞きたいんだけれど。』
〔なに、女神〕
『ここを長身の男が通らなかった?』
〔あいつ…好きじゃない。海を固めるんだ〕
〔僕見たよ。〕
〔あっちにいたよ!〕
普通に生きているイルカたちも出てきて教えてくれた。どうやら、私の前ではみんな仲がいいようで食べたりはしなかった。
『そっか…』
〔歌ってた…悲しいような歌〕
『あぁ…あの歌ね。』
〔歌って…女神…〕
〔聞きたい…歌ってよ…〕
周りにどんどんと集まってくる海王類や海の生き物たちが私を取り囲んでいた。
『〜♪〜♫』
あの人と同じ曲を歌ってやると海も静かになり凪の海域を作り出していた。周りの海王類は気持ちよさそうに回り漂っていた。
〔いい。とてもきれい。〕
〔また歌ってよ…女神〕
海王類たちは満足したのは次々と海に帰って行った。
『ふぅ』
「海王類がやけに集まって何してんのかと思ったら…久しぶりじゃないー?アンちゃん」
後ろから聞こえたキコキコという何かを漕ぐ音、間延びした気怠げな話し方。
『できればもう二度と…会いたくなかったですよ。海軍大将青キジ』
「ありゃりゃ、そりゃ寂しいことを言ってくれるねぇ。俺は君に会いたくて会いたくて仕方なかったのによ」
青キジさんは自身の周りに氷を張り、そして自転車のスタンドを下ろした。