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御人様は眠くなる【十二大戦】

第1章 第1章 開幕


1. 不思議ちゃん

申の戦士、砂粒。またの名を柚木美咲という。
本名を先に言うのが普通かもしれないが、今の彼女は戦士として存在する。戦士である以上、彼女の名は砂粒であり、それ以外の何者でもない。
いや、それは言い過ぎか…。

「…やっぱり、肉ちゃんも来るのかしら。顔見知り同士で殺しあうなんて、戦略があるとはいえ辛いなぁ」

砂粒は今、集合場所であるタワーの床下にいる。パイプの並ぶこの場所は、あまりいい所とは言えなかったが、彼女の狙いは寛ぐ事ではなく、誰がどう考えても物騒なもの。それは彼女が戦士であるが故に思いつく発想だった。

(ん?誰か来たみたい。やる事はやったし、そろそろ私も戻ろうかな。早く行って損はないし)

やる事はやった。
宿題を終わらせたように言う砂粒はリュックを背負い直して、集合場所である一室に向かう。一室というより、ホールと言った方が適切かもしれない。パーティに使われそうな綺麗な場所だったし、肉ちゃんが好きそうなだと思う砂粒。

カンッ

そこで彼女は足を止めた。それは、この大戦ならではのものではなく、これまでにも感じたことのあるもの。
…殺気だ。
殺気だけで、戦士かどうか大抵は分かる。まあ、今回は戦士のみなのだから、戦士以外の殺気がする方が不自然なんだろうけど…。

「なんだね。まだ何も始まっていないというのに、落ち着きがないのだがね」

「!…こんばんわ。そんなに強いものではないけど、殺気を出してるというより、殺気が漏れてるって感じだね」


そこに現れたのは丑の戦士、失井だった。
多分、今回の大戦で実力だとトップ3に入る一人。彼はいつも感情の読み取れない顔をしているけど、それは今回も同じようだ。
おっと、それより急いで行った方がいいかも。あの殺気からは、異常なものを感じる。元から殺気っていうのは、そう簡単に出そうと思って出せるものでもないしね。

失井と砂粒は共に集合場所に向かう。足を動かしてからは特に何も話さなかったが、それを苦だとは二人とも思わなかった。

そして二人は、ほぼ同時に足を止める。

砂粒は驚いた。
目の前の状況が濃いものだったからではない。
目の前の少女が、他の誰よりも浮いていたからだ。
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