第1章 第1章 開幕
その後、それぞれ戦士たちは散らばった。
その時に気づいたのだが、彼女に庇われていた戦士は、多分巳の戦士。彼女の存在が大きすぎて、遮断していた部分。彼らの近くにはもう一人、辰の戦士が居たのだ。
…彼らは双子。噂に聞く辰巳兄弟である。
分かったのは束の間、辰巳の顔が揃った時だったのだが、本当に似ている。巳の戦士は彼女に頭を抱きしめられていた所為もあったが、ここまで似ているとは…。
「たくっ、何やってんだよ。だからはしゃぎ過ぎるなって言っただろうが」
「……」
「…お、おい。聞いてんのか?」
ぼーっとする巳の戦士に、辰の戦士は軽く蹴りを入れる。それはまだ緊張がないと判断した兄の行動だった。
すれば、巳は「うおっ」とそれは緊張感のない声を出す。辰は一つため息をして、弟をつれその場を離れていった。
気づけば、彼女はいない。
声をかけようとも思ったが、大戦が始まりさえすれば、互いに生きていれば、会うことは出来るだろう…。
そこまで深く考えず、砂粒もその場を後にした。
集合時間が近づくにつれ、戦士たちが揃い始める。
後は亥の戦士。異能肉だけとなった。肉ちゃんは派手さにこだわる所があるし、亥は最後に来るものだからね。
砂粒は面識のある彼女について考えると同時に、例の彼女について疑問を持っていた。
今言葉に居るのは、子から戌の戦士。誰がどの戦士か当たっていなくとも、最後に残る違和感は同じものだった。
干支の代表は、12名。しかし、この場に居るのは11名、彼女を抜いて11名なのだ。とすると、彼女はここのスタッフか、何かだったのか…。あの服装、行動、態度、発する言葉は、どちらかというと戦士のモノだったと思う。優城との会話も、スタッフ側より戦士側のものと考える方が自然。
自分の見たものと、あるはずの事実が混じり合わない。
…逆に、何故自分がここまで彼女に執着を持つのかも不思議な話だ。
まあ、今日は現実離れした戦士だが揃うのだから、こういう事があっても不思議じゃないとも言える……かな。