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御人様は眠くなる【十二大戦】

第1章 第1章 開幕


女は男より強し。
そう考えて出てくるのは夫婦。次に姉弟。またその次に文化祭の女子。
一般的に考えるならば、この三つのどれかだろう。戦士である自分がそのどれかを思ったのだから間違いない。まあ、それはそれで、自分にまだ一般脳が残っている事をホッとしたのも事実。皆思う所は同じだ。

「…そろそろ下ろしてくれない?手が疲れてきたんだけど」

この静けさの中で最初に口を開いたのは彼女だった。
よく見ればまだ若い。顔に幼さがあるし、言葉遣いも若さが滲み出ている感じだ。

「じゃあ離したらいいよ。君も僕のお友達にしてあげるから」

彼女に大鉈を向ける彼は、格好を見た感じ卯の戦士だろう。その大鉈を素手で止める彼女には流石の一言でまとまってしまうし、右手で抱きしめているのは…誰だろうか。しかし、彼を卯の戦士から庇っているのは目に見えている。殺気も音も、血も出していない彼女は、いったい何の戦士なのか。まだ何も分からない。

「いや、下ろすべきだよ。この状態を続行したって何の意味もない。それをあの二人が証明してる」

ごもっとも。彼女は視線だけをこちらに向けて言った。このまま続ける気なら自分が止めに入るし、最悪他の戦士に隙を突かれて一気に殺られる。
その可能性はゼロじゃない。

「…うーん。人がいっぱい来ちゃうのは避けたいなぁ」

「まあ結局、この後存分に戦うことになるしね」

彼女が嫌々に言えば、卯の戦士。優城は考えるそぶりをした。

「…うん。確かに、そうだねそうしよう、それがいいよ!」

別に骨格が上がったわけではない。ただ優城の声のトーンが高くなっただけ、それだけでも彼の場合感情が分かりやすかった。優城は、大鉈を下ろすと彼女にグッと顔を近づけて、彼女の顔を見た。彼女はその行動に微動だもしない。無表情と言ったら悪いが、その通りの顔だった。

「あとで君も僕のお友達になってくれる?」

…空気が変わった。その誘いに彼女は答える。

「…あとでね」

「え、本当に?わぁ、嬉しいなぁ、嬉しいなぁ!」

そう聞いた優城は、目を少し見開いて、彼女から顔を遠ざけた。正確には元の位置に戻ったのだ。彼女らに背を向けて歩き出すと、六歩歩いた所で、顔だけをこちらに向けて言う。

「またね」

ほんと、彼女何の戦士なのかしら…。



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