第1章 風邪っぴきさん。
「お前、俺が体調悪くてぶっ倒れてるやつ置いて帰るように見えるか?」
「いや、そんなことは…」
「じゃあ、乗れ」
「え?」
そう言って達央さんは私の前に背中を向けてしゃがんだ。
「ほら、乗れよ。」
「え、いや、そんな、大丈夫です。」
「大丈夫じゃねぇだろ、早く乗れって」
達央さんは私をおんぶしようとしているらしい。
歩けないし大丈夫じゃないのは間違っていないけど、そんなおんぶしてもらうなんて…
「私重いですし…」
「そーゆー問題じゃねぇだろ、ほら。」
「でも…」
「はーやーくー。」
「はい…」
あまりの達央さんの圧に押されて、背中に手を伸ばした。
「よし、ちゃんと捕まってろよ」
「すみません…」
「いいんだよ。キツイ時はちゃんと頼れって。てか、俺は謝られるより、聞きたい言葉あるんだけどなぁ?」
「あっ…ありがとうございます」
「そうそう。その言葉が聞きてぇんだよ。どーいたしまして。」
「はい…」
たつさんにおんぶされて、スタジオから出る。
すごく申し訳ないけれど、こうやって助けてくれてすごく嬉しい。
「なぁ、*今日ここまで何で来た?」
「んー、電車です…」
「だよなぁ…どーすっかなぁ…」
そりゃそうだ。今日のスタジオは、家から近いと言っていたし、歩いて来ていたんだと思う。
「ここまでで大丈夫ですよ…ここからはなんとか頑張ります。」
「いや、そういうわけにはいかねぇだろ。」
「ここまで送ってくださっただけでもありがたいです。」
そう言って達央さんの背中から降りようとした。
けれど、達央さんは手に力をいれて、降ろそうとはしてくれない。
「達央さん…?」
「だーめ。このままでいい。てか、お前多分歩くの無理だぞ。」
「大丈夫ですよ」
「いや、ぜってぇ歩けねぇって。*、今自分の体温どんだけ高いからわかってる?」
そう言われてみれば、ぼーっとするし、なんだか頭がふわふわする。
「でも、これ以上迷惑かけるわけには…」
「迷惑じゃねぇの、俺がやりたくてやってんの!だから、お前は何も気にすんな。」
「はい…すみません…あっ、、、ありがとうございます。」
「そう、それでいーの。」
本当に優しい人だなぁ。もっと好きになっちゃう。
ぼーっとする頭でそんなことを考えて、達央さんの背中で揺られていると、なんだか眠くなってきてしまった。
