第1章 偶然の出会い
「ここに置いておく。」
と言う男。
男は長い刀を持ち、帽子を深く被り店を出ていこうしていた。
「え、お客さん1万ベリーものおつり忘れてますよ。」
置かれたお金を見てマスターが男を止める。
後ろから声をかけられた男は足を止めた。
そして言う、“忘れたわけじゃねェ”と。
1万のおつりが出る事を知らないならまだしも、自覚して置いて帰るのなら彼は余程お金に困っていないのだろう。
とは異なりお金に苦労していないのだ。
お金持ちはいいなぁ。
と羨ましいと思う気持ちと合わせて、自分が千ベリーでも意地張って値切ろうとした姿が恥ずかしく思えた。
だって女だ、お金に困らない生活に憧れている。
だが現実的な問題今の生活では無理だ、生きていくだけでも困難なのだから。
お金持ちになれればどんなに楽か。
こうやって意地になって値切らなくてもよくなるのだから。
「その1万はそこの女のやつだ。」
がグラスに口をつけると同時に男は言った。
わ、私に!?
は無意識に男が座っていた席に置かれている1万ベリーのお札を見る。
無造作に置かれている3枚の1万ベリー。
その中の1枚をくれると言っているのだ。
こんなの貰えない。
友人ならまだしも彼はまだ会話を交えてもいない赤の他人だ。
「ちょ、ちょっと!」
男を止めようと出入口の方を振り向いた。
振り向いた時はもう遅く男はもう店の中には居ない。
追いかけようとしたがまだお勘定が済んでないのでやめた。
「行ってしましたね。」
マスターがボソッと呟いた。
「お姉さん良かったですね、1万びっくりベリーも貰って。」
「赤の他人に貰ってもよくないわ。使えるわけがないのに。」
3枚のうちの1枚をとり、指の間に挟みユラユラさせる。
汚すぎず綺麗すぎず折り曲げられた痕が多くよく見るお札。
私はそのお札を手に取りギュッと胸もとで握りしめた。
「ねぇ、あのお酒10万ベリーで買う。」
「ありがとうございます。」
この1万ベリーは本人に返すまではこの島を離れないと決める。
そして、お酒を受け取りテーブルに10万ベリーと飲んだお酒代を置く。
1万ベリーの男を探すために外に出た。
時刻は24時を回ろうとしていた。