第1章 偶然の出会い
「いくら?」
「10万ベリーです。」
「……え?」
思わず心の声を発してしまい、店の中に響き渡った。
とマスター、2人から少し離れたところに座っている男の3人しかいない。
そのため、注目を浴びる事はもちろん恥をかくこともなく、笑い声も聞こえることは無かった。
「これの新作が10万ベリー?」
聞き間違いかと思い、改めて恐る恐る聞く。
「はい、10万ベリーです。」
ニッコリと言うマスターに対してはゾクッと体が震えた。
たかがお酒1瓶に10万ベリーは驚いた。
今日まで飲んできたのは高くとも5万円を少し超えるぐらいのお酒だ。
5万のお酒でさえ高いと思っていたが、10万と聞くと恐ろしい事に5万がとても安く感じる。
……1瓶で10万か。
グラスに入っているお酒を見つめ買うかどうか悩む。
「どうなさいます?」
と聞かれても黙ったままの。
今現在の所持金は11万ベリー。
お酒は10万ベリーなので足りるのだが、ここで飲んだお酒のお代と今日泊まる宿の値段を引くと11万ベリーでは足りないだろう。
ホテルに泊まるとお酒は買えない。
野宿すれば、お酒は買える。
いくらお酒好きとはいえ悩むところだ。
「マスターもうちょっと安く…。」
「安くですか?」
「ええ。」
苦笑いでじっと新作のお酒の瓶を見つめるマスター。
せめて5千ベリー安くなると何とか宿には泊まれるだろう。
5千ベリー安くして。
とマスターが悩んている中、はひたすら願い続けた。
が、結果は
「9万8000ベリーはどうですか?」
2千ベリーしか安くならなかった。
さすがに1回で5千ベリーをまけてはもらえない。
「もう一声お願い!」
「もう一声…ですか?」
「うん、どうしても欲しいのそのお酒。」
「んー……お姉さんの美しさに免じて9万7000ベリーでどうですか?」
ーーー私の美しさってたったの千ベリーなの…?
値段よりも物凄くそこにつっかかった。
優しそうなマスターだが実際は腹黒なのかもしれない。
人は見かけによらない、まさにその通りだ。
どうにかしてあと2千ベリーどうやって安くしてもらいたい。
すると今まで静かにしていたもう1人の客が突然、口を開いた。