第5章 学園
「君は…見なくていいから」
悲しそうに瞳を伏せるスザク。
しかしこの距離でも充分中身は確認できた。
バケツの中に浸かっていたのは、スザクの体操着ーーー
白地に赤い文字でスザクを罵倒する下品な言葉が綴られてあった。
「なに…これ」
カナは驚愕に目を見開いて、目の前の体操着を凝視し、言葉を失った。
イレブンも通える学園と聞いていたのに、皮肉にもルルーシュが自分がイレブンだとわからないように偽名を与えてくれた優しさが…今ようやく理解できた。
この国ではブリタニアの子供ですら、イレブンの存在を否定している。
悔しくて、ぐっと唇を噛み締めた。どうしてスザクがこんな目にーーー
「…カナ、君はこれから僕に会えるのが嬉しいって言ってくれたけど、学園内では僕に話しかけないで。
僕はイレブンだから、一緒にいると君まで…」
カナに心配をかけさせないように無理に笑顔を貼り付けるスザクにカナは押し黙る。
なぜスザクにこんな悲しいことを言わせなくてはならないんだろうーーー
つんと鼻の奥が痛くなるのをカナは必死に堪えた。