第5章 学園
「スザクさん」
カナはまるでいたずらする子どものようにわざと気配を消した。
そして、背後からそっと声をかければ、スザクは大げさに驚いたように振り返るが、
声の主がカナだとわかると胸をなでおろして笑った。
「カナ…えっと、久しぶり。っていうのもおかしいかな」
「スザクさんもこの学園にいたんだね」
「うん、僕もここにきたのはつい最近だけどね。…それより、君が元気そうでよかった」
「スザクさんこそ…元気そうで安心した」
顔を見合わせ、笑いあう。
「それにしても…まさかこんな感じでまた会えるなんてびっくり。同じ学園ってことは、これからは毎日スザクさんとも会えるんだね」
「軍の命令もあるから…毎日は無理かもしれないけど、それでもなるべく学園には通うよ」
「本当?」
「うん。僕もカナに会いたいしね」
「うれしい」
こうやって普通にスザクと話していれば、一方的に感じていたわだかまりなどほどけていくようだった。
このまま離れていた間の出来事をさり気なく 尋ねてみようとしたカナだが、スザクのすぐ後ろの洗い場の蛇口が開きっぱなしになっていて、
水を受け止めるはずの用途のバケツからは大量の水が溢れ出していた。
カナは不審に思い、顔をしかめた。
「スザクさん、なにしてたの?」
カナはバケツの中身を確認しようと、一歩踏み出そうとするが、スザクによって制止された。