第17章 失った記憶、失くならない記憶
その後もお妙や長谷川のところへ行ったが、銀時は何も思い出さなかった
「…会う人会う人、皆さん"未来さん"の話をするんですね」
「銀さんと未来さんは、なんだか特別な雰囲気でしたから。銀さんはただの腐れ縁だなんて言ってましたけど、未来さんと一緒にいる銀さんって、なんだかいつもと違ってたし」
「特別…」
「まあ、どっちかって言ったら銀ちゃんが未来にベタ惚れな感じだったアルよ。完全に未来の尻に敷かれてたネ」
「あはは。ベタ惚れかどうかは分からなかったけど、確かに未来さんには優しいよね」
「銀ちゃんにとって未来はきっと大切な人アル。未来も同じネ。大切な人に忘れられるのは、寂しいアルよ…」
神楽の傘が邪魔で新八から神楽の顔は見えないが、その声は珍しく頼りなく聞こえた
「神楽ちゃん…」
「だから、ゆっくりでも良いから思い出していくネ。きっと何かの拍子に思い出すアルよ」
「そ、そうですよ!元気出していきましょう」
新八と神楽は銀時を励まし続けた
でも銀時は歩いていた足を止め立ち止まった
「もういいですよ…。僕のことは気にせず自由になって下さい。聞けば給与もろくに貰わず働かされていたようですし…」
「銀さん…?」
「彼女…未来さんにもそう伝えて下さい。プウ太郎と女医さんって…、そもそも無理あるじゃないですか。僕には手に負えませんよ」
「何言ってるアルか、銀ちゃん…」
「でもこれもいい機会かもしれない」
神楽の言葉も聞かず銀時は続ける
「万事屋はここで解散しましょう」
色々手を尽くしてくれる新八と神楽に、銀時は背を向けて歩いていった
呼び止める新八たちの声に振り向くことなく