第4章 ハートの海賊団
集まってきた船員達の焦るような心配する声を聞きながら素早く印を組み、さすがに船を沈めるわけにはいかないのでチャクラの量を最小限に抑えて術を発動させる。
「「「「!!!!?」」」」
当然というべきか船長である彼を含めた船員達が突然口から水を吹き出した私に対して驚きを露にさせた。
『…どう?これで少しは私の言葉を信じる気になった?』
「「「え……ええッ!!!?」」」
ベポ「ちょ、雫の口から水が出てきたんだけど!?」
「どうなってんだ!?」
「……テメー等、少し黙れ。…おい、全身濡れちまったじゃねぇか。どうしてくれる」
鶴の一声というべきか、彼が言葉を発した途端先ほどまで騒がしかった声もピタリと止まり静まり返る。
威力は抑えたとはいえ甲板だけでなく彼を含めた船員達も全身びしょ濡れ状態で、不機嫌を隠すことなくこちらを見てくる彼だが全員濡れているという光景が無性に可笑しくてたまらない。
『…っ、まぁ水も滴る良い男…っていうでしょ?ふふッ…』
「(こんなふうに笑うのか…って何考えてんだ)…笑ってんじゃねぇ。ったく面倒なことしてくれた。お前には「雫」…あ?」
『私の名前。雫って名前がちゃんとあるんだからそう呼んでくれない?』
「…ハァ…。雫には島に着く間厨房の手伝いをしてもらう。コイツの事が知りてぇなら本人に聞け。とりあえずシャチ、船内の案内と厨房の説明を任せる」
『ちょっと待って。あなたの名前、聞いてないんだけど』
濡れた状態が気にくわないのか煩わしそうに服や帽子を絞っている彼が船員の1人に指示を出して船内へと戻ろうとしたので引き止めるため声をかける。
「…トラファルガー・ロー。それが俺の名だ」
そう短く名乗ると今度こそ船内へと入っていってしまった彼…ローの後ろ姿を少しの間見続けた。