第4章 ハートの海賊団
当然というべきか俺が発した言葉に対して不快感を露にした女の纏う空気が僅かだがピリッと震えたのを感じる。
だが知らないものは知らないのだからどうしようもない。
そんな俺とベポの様子に信じられないのだろう明らかに動揺している女が少しして再びこの場所はと問いかけてきた。
「此処は偉大なる航路…【グランドライン】だ」
そう答えてやると女は何かに絶望したかのように面を片手で覆い隠して盛大な溜息を吐き出し無言になってしまう。
「……オイ、今度はこっちの質問に答えてもらうぞ」
このまま無言を貫かれる前にこちらの質問にも答えてもらわねばと口を開く。
『………いいけど、多分あなたが望むような答えは返せないとは思うけど』
「望むものかそうでないかはこっちが判断する。…まず1つ、どうやってこの船に乗った?出航する時、というのはまずありえねぇ。かといってこの海の上を航海していた形跡もない。…なら何故だ」
先ほど除外した密航者以外で考えられるのは女も航海していたが何らかのアクシデントが起こり偶然見つけたこの船に乗った、としか考えられない。
だが辺りを見渡しても船があった痕跡もない。
もし船があればさすがのベポも気付くだろう。
なら何があってどうやってこの船に乗ったのか、まずそれを聞かないことには先に進めないので問いかけると女が間を置いて口を開いた。
『………あなた達が信じてくれるかは微妙なとこだけど、正直言って私も何故この船に居るのか分からない。気が付いたらこの船の上に居たから』
「は?気が付いたら船の上に居ただと?…お前、嘘をつくならもっとマシな嘘を言ったらどうだ」
『ハァ……。あのね、考えてみなよ。こんな場所で、いつ海の中へ落とされてもおかしくない状況で嘘つく必要ある?それに私は聞かれたことを正直に答えただけ』
「……ならその面を取れ。そんなモノを付けたまま話す奴を簡単に信じれるほど俺はバカじゃねぇ」
女の口からでてきたまさかの答えにうちの船員でももう少しまともな嘘をつくぞと心の中で思いながらいつまでも顔を隠し続けている面を取るように告げる。
顔を隠した相手を信じられないのは本当だが、海賊船に乗り込む度胸のある女の素顔を見てみたいと興味がわいた。