第4章 雪上の氷壁 【上杉謙信】
てっきり曲者に襲われているか、体調に異常を来しているのかと思いきや。
特にする事もなかったのだろう、夕餉の直後だというのに早々に床に就いていた。
なにやら夢にうなされているようだ。
「う…ううっ…、はぁ…はぁ……」
傍に腰を下ろし様子を覗き込んでみると、茅乃は荒い呼吸を繰り返し左右に寝返りをうって、眉を顰めた苦悶の寝顔で呻き続けている。
「…うぅ…、申し訳ありません…申し訳…申し訳ありませ…」
現実のみならず夢の中でも謝っているとは。
よほどの悪夢なのか……
「おやめ下さ…、やめ…て…ぅうう…っ!」
ひときわ大きく苦しげに掠れた声を発し、勢いよく褥から起き上がった瞬間。
「助けて……!!」
触れるぬくもり───
しがみつくようにこちらに身を預け、小さく細い肩を震わせる。
何を思うよりも先に、その背中に手を回そうとした時。
俺の胸元に頭を寄り掛けていた茅乃から息を飲む音が聞こえ、ぬくもりが離れた。
「……っ!
……私ったら何を……。……申し訳ありません」
我に返ったようで、バツが悪そうにさっと後ろを向く。
何度も寝返りをしたせいか、打掛は脱げ落ちていて寝衣の衿元は乱れていた。
その衿元から露出したうなじの少し下あたりに、あるものが見える。
「その痕は……」
指摘しようとすると茅乃は慌てて着崩れを直そうとする仕草をしたので、それよりも幾分早く衿を引き下げた。