第3章 ブルームーン 【伊達政宗】 《R18》
自然の中だけど多少人の手が加えられているようで周りには灯りがいくつか設置されており、夜でも足元が見える。
温泉は湯加減もちょうど良く、まろやかな肌触り。
周りには聳えた木々の葉が秋風に優しくそよめき、私達を見下ろしていた。
「はぁー…温まるー…」
「だろ。こうしてりゃ疲れも吹っ飛ぶ」
こんなにゆっくりお湯に浸かるなんていつ振りだろう。
身体の芯から温まって、彼の言う通り疲れが癒やされていくのが分かる。
目を瞑れば微睡んでしまいそうな、そんな時……
「お、また満月だ」
そう呟いた政宗につられて見上げてみると、澄んだ夜空にくっきりと丸く縁取られた満月が浮かんでいた。
「確か今月の頭くらいにも満月だったはず。珍しいな」
「あ、私その現象について聞いたことある。あれはきっと、ブルームーンだよ」
「…ぶるー…?」
「南蛮語でそう呼ぶんだけど、私達の言葉で訳すと“青い月”って意味」
「いつもと同じ色に見えるのに?」
「青い色をしてるわけじゃないんだけど諸説あってそう名付けられてるみたい。
月に二度も満月が現れる現象のことで、わりと稀なんだって」
「へえ…青い月…、か。気に入った」
時折涼しげな風が髪を掠めていく心地良さを感じながら、二人肩を並べて月を眺める。
明日からまた朝から厨で包丁を握る彼の横で作業を手伝って、食事を共にして、洗い物をして、同じ褥で眠る。たまにはこうしてお湯に浸かってお喋りしたりして……
「? 何にやけてんだ」
「ふふっ、毎日幸せだなぁって。まるで夫婦みたいだね、私達」
「みたい、じゃなくてもう夫婦だろ?」
「え?」
「まぁ正式にはまだだが、近々祝言を挙げる手続きを取ってある。
だから実質もう夫婦みたいなもんだ」