第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》
抱き締められたまま、啄むような唇の感触が首筋を通っていく。
啄まれるたびにこそばゆくて身震いしていると、羽織っている打掛の衿を下ろされて……
肩から滑り落ちたと同時に、襦袢が露わになった。
そして、腰紐が解かれようとしていた時──
「…ま…待って!」
思わずその手を押さえてたじろぐ。
「待つ…?拷問に等しい仕打ちだぞ」
「拒んでる訳じゃないわ。ただ言っておかなきゃいけない事があって…
あの…私…初めて、なの」
「……。
……驚きだな。以前、まさにこの褥で俺を誘惑したというのに」
「あれは貴方を振り向かせようと必死に演じてたのよ。本当は余裕なんてなかったわ」
いかにも百戦錬磨みたいなふりをしておいて、実は生娘でした──なんて、恥ずかしいにも程がある。
しかし隠していてもばれるのは時間の問題だろうし、あえて自分から伝えておきたかった。
「……滑稽よね。失望したかしら」
「むしろ逆だ」
「え……」
「俄然、欲しくなった」
背中を支えられつつ倒された身体は褥へとゆっくり沈む。
「輩共にあのような啖呵を切っておきながら、褥ではこうも初に恥じらう貴様の姿はこの上なく愛らしい」
「信長様……」
愛らしい、なんて幼い頃から聞き慣れた台詞のはずなのに、この人から言われると心の奥底からじんわりと嬉しい気持ちが込み上げてきてなんだか照れくさい。
すると、ふと信長様の手が脇に置かれていた小鉢に伸びて、金平糖をひとつ摘むと私の口の中に入れた。
「なにを……、んっ」
再び塞がれた唇。
しかし塞がれたと思いきや、その隙間から熱い舌先が滑り込んできて。
絡め取られた私はされるがままに翻弄されていく。
「ん…んぅ…っ…、んっ…」
あまりにも熱っぽく甘やかで、脳内が麻痺してしまいそう。
このとろけるような甘さは金平糖だけのせいじゃない───