第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》
お礼の代わりが口付けだなんて…
そんなまさか…予想だにしてなかった。
口付け、ってこういう感じなのね。
なんかこう…甘くて…柔らかくって…
…って、やだやだ!顔中が熱くなってきじゃない。
どうしたらいいのか分からなくて、じたばたと狼狽えていると……
「時に茅乃。貴様は三日前、何やら言いかけていたな。続きをまだ聞いてない」
「あ…あれは…あの…その…」
「どうした?歯切れが悪いぞ」
三日前言いかけていたこと…
“私は、貴方のことが──”
そう言いかけて、誤魔化したままだった。
あの時は自分も勢い任せだったし、改めて言うにはまだ心の準備が……。
「言えぬのか?」
綺麗に整った顔が間近に迫ってくる。
どうしても言わせたいのね、あの言葉を。
…ああもうだめ、逃げられそうにないわ。
「私…貴方には腹を立ててるの」
「ほう」
「あれだけ冷たかったくせに…蔑ろにしたくせに。
なのに、嫌いになりかけた途端こんな気持ちにさせるなんて。
ずるいわよ…ずるい」
これ以上赤らんだ顔を見られたくなくて俯くと、頬を両手で包まれて……
ゆっくり見上げると、そこには真剣な眼差しがあった。
「それはこちらの台詞だ。
取り繕った上辺だけの言葉を並べ、媚を売ってばかりの貴様には辟易していた。
…なのに、今はこんなにも心を揺さぶられている。
ずるいのは、貴様も同じだろう」
…そうね。
私達は、互いの本当の姿を知らな過ぎた。
でも真実を知った今、何を躊躇する事があるだろう?
後はもう素直に、心の赴くまま、突き進むしかない───。
「…信長様。私は…貴方のことをお慕いしています。…好きです、貴方が」
そう言い終わると同時に、またもや唇を奪われて……
「ようやく聞けた」と信長様は私を強く抱き締めた。