第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》
「貴方達、織田を殺して私を売る気なんでしょう」
「ああ、よく分かってんじゃねぇか。あの織田信長の奥なら計り知れない金額で高級遊廓に売れる。名誉と金を手に入れて一石二鳥だ。わざと負け戦を演じた甲斐があったぜ」
「そう、ならちょうどいいわ。
織田が討たれれば、私も城を追われて野垂れ死に。
死ぬよりは遊女として生きながらえた方がマシだもの」
「ははは!ずいぶんと物分りのいい奥方様だなぁ」
下品に笑う男達は少し緊張が解けたようで。
その隙に、舞に何度か目線で逃げように合図を送ったが、彼女は首を横に振るばかり。
「…どれ、売り飛ばす前に味見でもしとこうか」
目の前にいたひとりの男が、荒っぽく腕を掴んでくる。
私は瞬時に懐から出した扇子でその汚らしい手を叩きつけてやった。
「もう少し丁重に扱ってちょうだい。
───私は高価いのよ?」
はらりと扇子を広げ、口元を隠す。
隠した裏側では、舞だけに見える角度で口の動きを使って“逃げて”と再び合図をした。
「だめ…そんなのだめ…!
茅乃さんやめてーーーっ!!」
背後で泣き叫ぶ声が耳から耳へとすり抜けていく。
泣いてる場合じゃないわよ、早く逃げて。出来るだけ遠くへ……
私が囮となって犯されている間に舞が逃げられれば、全て上手くいくはず。
信長様だってそう簡単に殺されやしないわ、大丈夫よ。
彼の幸せを守る為だったら、後悔しない───
「ふ、気の強い女も悪くねぇな。じゃあお望み通り優しくしてやっ───」
無数の男達の手が触れようとしてきた、刹那───
漆黒の陣羽織が視界を塞いだ。
「どこまでも高飛車な女だな、貴様は」