第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》
「この私が通るのよ!道を開けなさい!」
強かな気迫の込もる命令が、高らかに轟く。
そう凄まれた見張り役達は身構えたものの。女を目にした途端に数歩、後退りをした。
開けた通り道を一歩、また一歩と、
堂々たる足取りで舞のもとへ歩み寄る。
舞を囲っていた男達も刀を構えようとしたのだが、見張り役の者達と同様に脱力してしまった。
───ゆるやかに揺蕩う艷やかな長い髪、雪のように白い肌。
夜空に浮かぶ満月を背にして凛と佇むその女の見目はまるで天女か、花の精か。
誰もがたじろいでしまうほど清らかで美しい姿は、 仄かな月下に照らされていた───
「茅乃さん…!どうしてここに!?」
舞の言葉をきっかけに、微動だにせず見惚れていた男達がやっと我を取り戻す。
「茅乃……?もしや織田の奥になったという噂の女はこの小娘ではなく、お前か」
「…色々勘違いしているようだけど、まあいいわ。
そうよ、私が茅乃」
「なるほど、こりゃあすげぇ…とんでもねぇ上玉がおいでなすった」
下心を抑えきれずだらしない笑みを浮かべた男達は舞から離れ、次は茅乃を中心にゆっくりと取り囲み始める。