第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》
草むらに身を潜めながら近づいてみると、思った通りそこには舞がいた。
複数人の男に囲まれ、逃げようともがいている。
──どうしよう。どうすればいいの。
ドク、ドク、と動悸が激しく鳴り、冷や汗がこめかみを伝う。
──助けようにも、武器も何も持ってない。
──誰かを呼びに行ったとしても、その間に舞は襲われてしまうだろう。
“次もまた一緒に来ましょうね!”
そう祭りで言ってくれた姿を思い出す。
そんな彼女を、私は見殺しにしようとしているのだ。
……………
……もし、舞が、死んでしまったら。
あの人は、どんな顔するのかしら。
……もし、あの人の微笑みが消えてしまったら。
私、自分を一生許せない。
……………
何かが頭の中で弾けた瞬間。
不思議なことに、冷や汗は止まり……
おもむろに立ち上がって草むらから出た私は、震えが収まった足で前へ踏み出した。
すうっと大きく息を吸い込む。