第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》
「なんだと……!?」
「我が軍が優勢のまま勝利、決着がついたはずだったのですが……
天幕にて怪我人を治療中であった舞様が拐われてしまい、御館様がそれを追って……」
「…敵方は敗北したと見せかけた後、舞を餌に御館様をおびき寄せ捕らえた…そういう事か」
「はい。同時に数名の者が姿を消しています…おそらく内通者の仕業かと…」
「───すぐに馬の用意を」
「はっ」
捕らえられた…?
あの人が、まさか。
茫然としているうちに話は進んでいき、
光秀様が室外へ出て行こうとした時にやっと私は行動に移すことが出来た。
着物の袖に勢いよく掴みかかる──
「お待ちになって!私も…私も連れていってちょうだい!」
「…気持ちは分かる。だがここは何卒辛抱して頂きたい」
「嫌よ!だって…──」
最後まで言わせてはくれなかった。
まるでぐずる子どもを諭すかのように私の手をやんわり押し返し、急いで立ち去っていく後ろ姿。
……が、このままじゃ大人しくしてられるほど自分は聞き分けがよくない。
さっそく通路を行き交っていた家臣のひとりをとっ捕まえる。
「そこの貴方!馬房はどこ!?教えて!」
「姫様…このような有事に何を…」
「いいから早くなさい!」
戸惑う家臣を半ば強制的に馬房まで案内させ、馬具の支度をやらせると、制止を振りきり鞍に跨った。
──城門の方から蹄の音がする。光秀様が一足先に出立したんだわ。
手綱をぐっと握り締めると。
馬に合図を送り、躊躇なく後を追った。