第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》
「……とにかく、理由はどうあれ私はもうしばらくこの城で暮らすわ。では失礼」
咄嗟に返事を濁して、天主を出ると舞がいて。
一度合った目を逸し、その場を立ち去ろうとしたが……
「あっ、待って。
私、茅乃さんを探しに来たんです」
「え…私?」
「はい!一緒にやりたい事があって。
私の部屋へ行きましょう」
どうやらあちこち回って私の居場所を探していたらしい。で、行き着いたのが天主。
てっきり信長様に会いにきたとばかり……。
一体何の用かと思っていると。
舞は自室に私を連れ込むや否や、裁縫道具と色とりどりの生地を広げた。
「これは…」
「みんなのお守りを作ろうと思って。──茅乃さんも聞きましたよね、戦のこと。
私…みんな無事に帰ってきてほしいんです。だからせめて縁起物でも身につけてくれればいいなぁって」
「…そう。それは私も同感だわ。
でも私、裁縫なんてやった事ないわよ?」
「是非教えますよ!一緒にがんばりましょうね」
お守りか…。針子が繕っているのを遠目からしか見た事ないわ。
舞の丁寧な指導のもと、布の切れ端を使ってまずは事前練習を始める。
「そう、そこでこうやって玉結びして…
わぁ、上出来!初心者とは思えないですね!」
「ふん、そりゃそうよ。やればなんでも出来るもの、私」
「…木登りも、ですか?」
「…。どこからその話を…。
私を弄るなんていい度胸ね、貴女」
「冗談です!ごめんなさい〜!」
ふざけ半分で針の尖端を向けてやると、舞が大袈裟に怖がるふりをしてきゃっきゃと笑う。
歳の近い女子とこんなふうに戯れるなんて初めてだわ。
今まで女同士の付き合いといえば、上辺だけの社交辞令だけだったから。