第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》
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それからというもの、信長様の事をもっと探りたくなった私は少しずつ接点を増やしていき……
彼もまた、最初の頃に比べたらこちらに対する態度が軟化したように感じる。
そして今日は、何度目かの囲碁勝負に誘われた。
「今回は策を練ってきたの。これで貴方もボロ負けよ」
「ふむ…確か先日も似たような台詞を聞いた記憶があるのだが?」
「ふふ、また新しい策があるのよ」
きっと私が負けず嫌いだから不憫に思って、こうして誘ってくれてるんだわ。
もし勝ってしまったら一緒に過ごす時間が減ってしまうかもしれない。
だから、わざと不利な位置に碁石を置く。
最も、そんな小細工しなくてもこの人には敵わないでしょうけど。
「──ところで茅乃。両親は息災か?」
「ええ、おそらく。便りがないのは元気な証拠ですわ」
パチ、パチ、と碁石を置く音が部屋に響く。
「貴様がここに滞在するようになってある程度経つ。顔合わせという名目にしてはいささか長過ぎたやもしれんな」
「…何が仰っしゃりたいの?」
パチ…と、音に重みが増した時。
碁盤の方へ視線を落としていた目が、こちらを捉えた。
「故郷へ帰れ、茅乃」
次は私が碁石を置く番なのに、それを持ったままの手が動かない。
「…そう…。
そう…よね。迷惑、よね。縁談相手といえどここまで長居されたら」
「そうではない」
「…っ、じゃあ、なんでっ…」
「──戦が、始まる」