第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》
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「いやあ、盛り上がったなー。面白いもんが見れたぜ」
「そうですねぇ政宗様。あまりの白熱ぶりにまたお茶をこぼしてしまいました」
「三成らしいこった。───じゃあ俺はここまでだ。またな」
────祭りからの帰り道。
辺りはすっかり暗くなっていて、各々が灯りを手に携えながら祭りの余韻に浸っていたのたが。
途中、政宗様がご自身の御殿へと帰っていったのを皮切りに……
「なんでお前は外でも茶こぼしてんのさ。
はぁ…これ以上聞いてたら苛々するからもう帰る」
「お待ちください家康様、顔色が優れませんよ?心配なので御殿までお供させて頂きますね」
「おーい、三成ー、逆効果だぞー」
一人また一人と離脱し、舞も「秀吉さんのとこのお針子さんに用があるの」と言って彼と一緒に御殿へ行ってしまった。
そんな訳で、残るは信長様と私のみ。
「ずいぶんと買い込んだな。どれ、持ってやろう。寄越せ」
「…結構よ」
やだ、二人っきりじゃないの。
まさか舞までもが行っちゃうなんて。
…いや、三人だけで居る方がもっと気まずいかも…
「どうした?負けたのが悔しくて不貞腐れているのか?」
「ちっ…違うわよ!眠いだけよ。
寝不足は美容の大敵だし…ただ早く帰って寝たいだけよ」
「美容…。まことに女とは難儀な生き物よのう」
そう言って突然こちらの様子を覗き込んできたものだから、ドキリと肩がすくんだ。
──確かに、結局あのあと投げ駒対決は負けてしまったけれど、不貞腐れてる訳じゃない。
ただ、あの時からなんだか調子がおかしくて。
こうしてこの人のそばにいるだけで、身体が熱くなって、心ノ蔵がうるさく騒ぐの?
「茅乃。今宵は、満足か?」
「…ええ…」
今、私はどんな顔をしているんだろう。
もし蛸のように赤らんで腑抜けた顔だったらどうすればいいの。
面でもつけて誤魔化してやろうかしら──なんて思いながら、城へと続く石段を上った。