第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》
───それからしばらく店巡りを堪能していたが、私と舞はいつの間にかあの四人とはぐれてしまったようで。
あえて目立つ場所にある長椅子に座り、皆と合流できるまで休むことにした。
購入したものを詰めた風呂敷は、はち切れそうなほどぱんぱんに膨らんでいる。
「わぁ〜、いっぱい買いましたね!まさか茅乃さんがこんなに楽しんでくれるなんて」
「ええ。初めてのことだらけで想像以上に楽しめているわ。来たかいがあったというものよ」
「…初めて?
今までお祭りに来たこと無いんですか?」
「そうよ。だって…───」
だって、母上が許してくれなかったから。
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『──祭り?
駄目です。行ってはいけません』
『どうして!?どうしてだめなの!?
お祭りって楽しいところなんでしょ、ばあやが言ってたもん』
『あれは粗末な庶民が楽しむものであって、私達が行くようなところではないの。
それよりもそろそろ舞踊のお稽古をする時間でしょう?早く支度してしまいなさい』
『……。はい……』
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母上は、教養に関してとてつもなく熱心だった。
それ故に少しでも品位に欠けたような事柄を毛嫌いしていて、嫌悪すら抱いていたほどだ。
だから祭りに行くことすら叶わなかった───
まだ幼かった頃の自分と母上の記憶を掘り起こしながら吐露すると。
「じゃあ夢が叶ったんですね!安土だとお母さんの目を気にする必要もありませんし、次もまた一緒に来ましょうね」
屈託のない笑顔でそう言った舞は、そっとこちらの手を握る。
温かい。何か不思議な気分だわ。
こくんと頷いた私は、心が和らぐのを感じた。