第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》
「もう始まってる頃かなぁ。楽しみ〜。
ねっ、茅乃さんっ!」
「……ええ」
城下へと向かっている道中。
呑気に話しかけてくる舞をよそに、私は苛々を募らせていた。
彼女と二人きりなのかと思いきや。
私用で不在の光秀様を除いて、秀吉様、三成様、政宗様、家康様も揃って同行する事になったのだが、それは全く構わない。
ただ問題は……
「貴様も付いてくるとは思わなんだ。今宵は裸足ではないのか?」
肩で風を切って先頭を歩くこの男───信長様がいるからだ。
ふいにこちらを見やりにやりと笑みを浮かべてそう茶化してくるものだから、思いきり睨みつけてやった。
やはり不粋な気持ちで草履を寄越してきたのね。
あとで突っ返して差し上げようかしら。
そう悶々としていると、三成様が隣にすっとやって来て。
「──時に茅乃様。今朝は仔猫さんを助けていただきありがとうございました」
「あら、三成様の飼い猫だったのですね」
「飼っているというか…まあ似たようなものですね。最近どこからともなく迷い込んできてうちの猫さんに懐き始めて以来、仔猫さんも共に過ごしているんです」
特に名前をつける必要性を感じていないようで、少し離れたところで歩いていた家康様から「本当、安直な呼び方」と意見されていた。
それからというもの一言、二言とあまり噛み合わない会話を続ける三成様と家康様のやりとりが可笑しくて、先程の苛立ちが薄れかけた頃……
私達一行は、安土が誇る大きな城下町へと到着した。