第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》
「一体どういう風の吹き回し?
もしかしてさっきの無礼を反省しているのかしら…」
そう思っていた矢先。
箱の隅に入っていたある物が視界に入った。
それは小さな木彫りの猿の置き物。
……
猿……
────“猿も木から落ちるとはまさにこの事か”───
そういえばそんな暴言を吐いていた。
つまりこれは皮肉を込めた代物。
追い打ちをかけるようにまた皮肉!
「あの男〜〜〜!!やっぱり許さない!絶対に許さないわっ!!」
窘めようとする侍女などお構いなしに感情のままに荒れていると、部屋の外から名を呼ばれて。
襖を開けば、また舞が来ていた。
「きょ…今日も元気そうですね、茅乃さん。
これから一緒に出掛けませんか?」
「遠慮するわ」
「あの…もしや私、何か失礼な事しちゃったんでしょうか。茅乃さんから避けられている気が…」
「……。別にそんなんじゃないわよ」
何とぼけたこと言ってるのかしら。あの男と関係ある癖に。
…けれど普段の様子を密かに垣間見ていると、人を出し抜いて嘲笑うような性分でもなさそうな感じがする。
なんとなく、だけど。
「それなら良かったぁ。是非一緒に行きましょ」
「……どこに行くっていうの?もうこんな時分よ?」
「夕方からお祭りがあるんです。きっと楽しいですよ!」
「祭りですって……!?」
よりによって、なんて事なの。
断ろうと思ってたのに……
何を隠そう、私は“祭りに行くこと”が幼い頃からのささやかな夢だったのだ。