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【イケメン戦国】夢心地の宵

第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》 





長年私の世話役を務めている侍女は我が一族の元に身を寄せる以前、別の土地で一介の女中として働いており、そこで仕えていた城に居合わせていたのが光秀様だった。ーーー
いつだったかそんな話を聞いた事がある。

懇意にしていたかどうかは知らないが、確かに接点があった二人。
そしてこの縁談が決まったきっかけは光秀様の口添えだったとの噂。
彼が私の評判を耳にして推薦したのか、それともやはりばあやと結託して縁談を画策したのか……

どちらにしろ、なんてお節介な人達なの。


「あの男と私を結ばせて何の意味があるっていうのよ、ったく…」


ごくんと最後の一口を飲み込み、もう少し風に当たって寝ていようと目を閉じかけたその時。
どこからか、甲高くそれでいて繊細な鳴き声が聞こえ……
最初は無視していたものの、時が経てどいつまでも止まないそれに耐え難くなって。
気怠く立ち上がり、声のする方へ歩き出した。

騒々しい…なんなのよさっきから。


「……あ……」


聳え立つ木々を見上げてみると、
その中の一本から伸びた枝にくっついている毛の塊……一匹の猫がしきりに鳴き続けていて。
睡眠妨害の正体をつきとめた私は、はぁっとため息をついた。
体の小ささからしてまだ仔猫。登ったはいいが下りられなくなったのだろう。


「ちょっとあなた猫でしょう、どうして下りられない訳?そこで騒いでるだけじゃ何も解決しなくってよ」


鳴き声は続く。


「甘えていては駄目よ。もっと自立しなければこの先やってけいけないわよ?
ほら、とっととこっちへいらっしゃい」


両手を広げて促してみるも全く聞く耳もたず、枝にしがみついたまま鳴き叫び震えるばかりで。

いやだわ、そんな潤んだ瞳で見つめないでちょうだい。何を期待しているの。
そのうち母猫か誰かが助けにくるでしょう、私がこれ以上出来ることは何も無いわ。
何も。………

…………


「ーーーああもうっ!」


何故ここまでやけになってしまったのか分からない。気がつくと私は着物の裾を捲くりあげ、草履と足袋を脱ぎ捨てた姿で木の幹を登り始めていた。



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